まったり叫ぶ桃の実

桃が1日の終わりに、その日思ったことを綴ります。口調が定まらないのもご愛敬

檀一雄『終りの火』読了

檀一雄『終りの火』読了。

 

檀一雄の代表作『リツ子その愛・死』の最後だけ読んでしまったことを後から知って思わず「やっちまったよ」と思わず天を仰いだ。まさか短編集に入ってるとは思わず……(苦笑)

ミステリーじゃないだけ良しとする。

いつかちゃんと読もうとは思っていたが、この1章だけでもいろんな暖かさと冷たさが詰まってて読みながら心がじんわりしたのに、全編通して読んだら泣くのでは? とワクワクしている。

 

思ったことをつらつらと書いていく。鮮度が売りよ!

 

とにかく読みながら思い浮ぶ物語の中の空気が柔らかくて、あったかくて、でもだからこそリツ子の苦しむ姿とかそれを見守る私とおていさんの辛さがより深く刺さった。

主に看病する病室内での出来事が描かれていたけれど、回想で夫婦一緒に土筆をめいっぱい採ってきた話や温泉で浮かれる私の話は読んでいて優しい気持ちになった。特にリツ子を温泉に引きずり込んでお湯の中で抱き抱える部分にはイチャつきっぷりにキュンとした。

 

リツ子とリンクするように荒れてマシになってを繰り返す天候は読んでいる私の死への不安と恐怖を強く揺さぶってきた。

段々弱って死に近づいていくリツ子の姿に昨年亡くなった祖父の姿も時々重なることもあって、それも私がこの作品で心揺さぶられた大きな要因の一つでもある気がする。もう生きてる姿では会えないのに、祖父の顔が見たくなった。

 

ここに至るまでにいくつものエピソードがあるのだと思う。それを全て知ってからだとリツ子と私から伝わってくる暖かさも冷たさもさらに強く感じるんだろうなと思う。

 

それと音の表現が可愛かった。リツ子のお腹を撫でたり足を擦ってあげたり、他にも時々出てくる擬音が可愛くて、太郎と共に和ませてくれた。

 

 

今度は最初から順に読みたいな〜。